
不動産投資を始める際に、自己資金だけではなく融資を受ける方は多いと思います。
昨今では政府のマイナス金利施策により、不動産投資ローンを借りるハードルは低くなりつつあり、借り手にとって使いやすい制度になってきています。
しかし、そもそも不動産投資ローンの仕組みや審査基準についてあまりよくわかってないという方はいると思います。
この記事ではきちんと融資対策できるように、不動産投資ローンの仕組みと審査の対策ポイントを説明します。
不動産投資ローンとは

そもそも不動産投資ローンは、アパート一棟や投資用区分マンションなど投資用の物件を担保にして、それらの購入資金を金融機関から借りる(融資を受ける)仕組みです。
住宅ローンとの違いは

住宅物件に関するローンで似た言葉として「住宅ローン」があります。この住宅ローンと今回取り上げる不動産投資ローンを混同されている方が多いです。
大きな違いは以下の2つです。
①不動産投資ローンは審査が厳しい
住宅ローンは個人が住むための物件を購入するための貸付です。したがって本人の返済能力を審査するため、安定した収入があるサラリーマンや公務員であれば基本的に誰でもローンを組むことができます。
一方で不動産投資ローンの場合、不動産経営の中で様々な障害が発生する可能性があるため事業の採算性や可能性も重視されます。そのため、住宅ローンに比べて不動産投資ローンは審査基準が厳しいとされています。
②不動産投資ローンは金利が高い
2017年10月時点での主要都市銀行の住宅ローンの金利相場は0.6〜1.075%です。一方で不動産投資ローンは2.8%〜3.8%となっており、不動産投資ローンの方が高い金利であることがわかります。
2018年の不動産投資への融資状況

2016年の秋に「金融庁がアパートローン向け融資の監視を強化」という報道が出て以降、不動産投資に対する金融機関の融資が厳しくなってきています。
実際ユーザーの声としても、下記参照元にある不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」が2017年10月24日にプレスリリースしている「不動産投資に関する意識調査(第8回)」の「 融資状況の変化で、厳しいと感じたことは何ですか? 」という設問に対して、41.2%の投資家が「 自己資金を求められるようになった 」や「 自己資金の割合が上がった 」との回答も32.4%に上がっています。
この回答からも分かるようにフルローンでの融資は非常に厳しく なってきています。
また、現状では、2018年以降も引き締めの傾向が続くと想定されるため、融資環境の厳しさは変わらないのではないかと考えられます。
ただ、日銀の金融緩和政策は、少なくとも2018年までは続くと予想されますから、低金利状態は変わらないかと思います。
参照元:https://www.kenbiya.com/img/press/pre2017-10-24.pdf
融資が利用できる銀行など金融機関の種類

都市銀行(メガバンク)の特徴
三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の4行が都市銀行(メガバンク)と呼ばれています。他の金融機関と比較すると融資評価基準になる投資物件の担保評価、投資物件の収益評価、借りる人(法人)の属性評価が厳しいですが、貸付金利は低い傾向にあります。
また、都市銀行(メガバンク)は広域に展開していることもあり、融資対象エリアは全国に及び、融資金額が大きくても対応可能です。ただし、同じ銀行であっても不動産投資への積極性が時期や支店によって大きく異なるという特徴を有しています。
地方銀行の特徴
地方銀行は、横浜銀行、静岡銀行、千葉銀行など地方に本店があり地域密着型の銀行になります。融資対象のエリアがある程度限定されていて都市銀行に比べると融資評価基準がそこまで厳しくなく、金利についても都銀より高めですが、信用金庫、信用組合よりは低くなります。
ただし、地方銀行は保守的な傾向が強く積算評価(土地と建物の評価をそれぞれ出して合計したもの)を重視しており、積算評価が低い物件だと融資が通りづらくなります。
また、金融機関によっては融資利用者の居住地や勤務地周辺に限定する、物件の所在地周辺に限定するなどの条件があるので、融資対象となるか確認が必要です。
信用金庫・信用組合の特徴
信用金庫・信用組合は、京都中央信用金庫や城南信用金庫といった地方銀行よりさらに規模が小さく市単位もしくは県単位相当を対象とした銀行になります。融資対象のエリアが地方銀行以上に限定されている場合も多く、融資審査基準が独自のものであることが多いです。
また、地方銀行よりも金利はやや高めですが、貸出残高の上限に関して地方銀行より高いところもあり融資評価基準が地方銀行よりも厳しくないため都市銀行や地方銀行で融資条件に当てはまらなかった方にはオススメになります。
ただし、信用金庫・信用組合は、担当者の良し悪しが大きなウエートを占めています。担当者によってはまったく進まないということもあります。既に取引している人からの紹介を受けるなどすると良いでしょう。
ノンバンク
ノンバンクは、三井住友トラスト・ローン&ファイナンス、セゾンファンデックス、新生プロパティファイナンスといった他の銀行から借り入れて消費者に貸付業務を行う会社になります。
そのため、通常個人向けの融資に限られており、法人向け融資は対応していないことが多いです。
金利は、4%以上となるケースが多く高利回り物件でないと収益をだすのが難しいです。ただし、融資評価基準が都市銀行や地方銀行、信用金庫・信用組合とは全く異なる評価基準で貸し出し業務を行っていることもあり融資の敷居は低く、共同担保を提供すれば担保価値を超えた金額の融資を受けることが可能です。
借りやすい反面、他の銀行では融資の下りない再建築不可や違法物件にも貸し出す場合があるため融資を受ける際には、慎重に検討することが必要です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が100%出資している政府系の金融機関になります。
融資エリアについても全国になり、起業家、女性や若者、高齢者と様々な方が融資対象となります。
金利は、1%後半から2%中盤くらいまでと低く固定金利になります。ただし、融資金額が3,000万円~上限の4,800万円程度しか認められず、返済期間も10年間〜15 年未満となっています。
金額の大きい不動産投資(高層マンション、1棟アパートなど)では使いにくいため、他の金融機関の利用が難しい場合のアパートやマンションへの投資用資金や大規模修繕などのリフォーム資金など、それほど大きい融資金額を必要としない場合に利用するのが適しています。
不動産投資ローンの審査を有利にするために

以下では、より有利に審査を通すための対策ポイントを紹介します。金融機関によって細かい審査基準は異なりますが、どの金融機関にも共通するポイントですので参考にしてみてください。
①物件の収益性が高いこと
金融機関は担保となる物件の収益性を評価します。融資の対象となる物件がどの程度稼ぐことができるのかを気にするのは当然と言えば当然です。したがって、投資物件の実質利回り(投資額に対して、家賃収入からランニングコストを引いた額の割合)が高ければ高いほど有利に交渉することができます。
②借り手の安定性が高いこと(年収・勤務先)
審査の際、借り手個人の属性はかなり重視されます。年収が高ければ高いほど融資は受けやすいです。また、安定した返済ができるかを見るために勤務先の規模や資本金、売上高なども評価されます。
③自己資金が多い
最近は頭金を全く出さないフルローンで不動産投資を始める方も増えているようですが、貯金が多くあると融資の審査は有利です。金融機関にとっては貯金が多く、頭金に回せる自己資金が多いほどリスクが小さくなるからです。
以上が融資審査を受ける際のポイントです。②については現在の環境から必然的に決まってしまうため、なかなか対策しづらいかもしれません。しかし①と③についてはきちんと調査した上で価値ある物件を選定し、計画的に貯金すれば対策することができるはずです。
是非参考にしていただき交渉を有利に進めて頂ければと思います。
不動産投資の融資対策 まとめ

この記事を読んで不動産投資ローンがどういったものか、審査の際に何を重視するのか分って頂けたかと思います。融資と聞くと「借金」という悪いイメージが浮かんでしまうかもしれませんが、きちんと仕組みを理解した上で活用すれば有効な手段です。是非無理のない計画で戦略的に利用してみてください。